民泊に泊まるゲストといえば、観光目的で短期滞在する旅行者を想像しがちです。しかし、近年の宿泊傾向を見てみると、観光の顔をしながら実は“ワーケーション”で来ているゲストが少なくないことが分かります。

たとえば「観光に来たついでに2〜3日は仕事もこなす」「平日はPCで作業、土日は観光」「1週間の出張を兼ねたリフレッシュ」など、**“仕事と余暇のハイブリッド滞在”**があらゆるシーンで増加しています。

この「ワーケーション需要」をうまく取り込むことができれば、1〜2泊で終わる短期滞在ではなく、**1週間〜1ヶ月の長期滞在につながるチャンスが生まれます。**民泊運営者にとっては稼働率の安定と利益の最大化につながる、まさに狙うべきニーズなのです。

今回は、「民泊で長期滞在予約をとりたいならワーケーション需要に応えよう」というテーマで、ワーケーションゲストが求める設備、物件づくりの工夫、OTA上でのアピール方法などを詳しく解説していきます。

観光だけが目的ではない時代に突入している

かつては、「旅＝休暇」という認識が一般的でしたが、今ではその境界線があいまいになりつつあります。コロナ禍を経てテレワークが浸透したことで、「働く場所を選ばないライフスタイル」が一気に普及しました。

その結果、「旅行先でも仕事をする」「地方に長期滞在しながらオンラインで業務をこなす」といった**“旅先を職場にする”スタイル＝ワーケーション**が多くの人にとって現実的な選択肢になっています。

特に、以下のような特徴を持つゲスト層は、民泊の長期滞在に親和性が高いです。

• フリーランスやリモートワーカー
• 海外企業に勤めるノマドワーカー
• 都市部から地方への「お試し移住」を兼ねた滞在
• 夫婦や家族での「観光＋仕事」スタイル
• 平日仕事＋週末観光のハイブリッド旅行者

一見、観光客に見えるゲストでも、実は滞在中の半分は仕事をしていた、というケースもよくあります。この需要を拾えるかどうかが、これからの民泊運営において収益の安定性を左右するポイントになります。

ワーケーション客が求める民泊の条件とは

それでは、ワーケーションで民泊を利用するゲストは、どんな条件を重視しているのでしょうか。短期観光客とは違い、ワーケーション客は**“滞在する環境”そのものに価値を見出す**傾向が強くなります。

ハイスペックなネット環境は最優先

ワーケーションにおいて最重要なのは、安定した高速インターネット回線です。テレワークのオンライン会議、動画のアップロード・ダウンロード、大容量データの送信など、仕事環境としてのパフォーマンスが求められます。

たとえば、以下のような配慮ができていると理想的です。

• 上下100Mbps以上の光回線
• 無制限ポケットWi-Fiの併用（予備回線として）
• Wi-FiのSSID・パスワードが明記されたカードを部屋に設置
• ルーターの場所を明示・自由に再起動できる環境

「ネット環境が不安定だった」というレビューは致命的です。逆に、「ネットが快適で仕事も問題なくできた」という声は、ワーケーション層に対して最高のアピールになります。

快適な作業スペースを確保

リモートワークといえば「作業デスク」も重要です。ベッドの上やローテーブルでは、腰や肩への負担がかかり、数日もすればストレスになります。

そのため、以下のようなワークスペースを意識しましょう。

• 座り心地の良い椅子（背もたれ・クッション性が高いもの）
• ノートPCが置ける幅90〜120cmほどのデスク
• 電源タップ（3口以上＋USBポート付きが理想）
• 間接照明やスタンドライトで明るさを確保
• 外の音が気にならない静かな空間

専用の「ワーキングコーナー」まで作れなくても、リビングの一角に“集中できる場所”を用意しておくだけでも印象は大きく変わります。

長期滞在を意識した設備・アメニティ

1〜2泊のゲストと比べて、ワーケーション客は**「住むように滞在する」**感覚を持っています。したがって、ホテル的な簡易設備よりも、生活しやすい空間を求めます。

たとえば、

• 洗濯機・乾燥機の完備（洗剤付きだと尚良し）
• キッチンと最低限の調理器具・調味料
• 冷蔵庫・電子レンジ・電気ケトル
• アイロンや掃除機など、自炊＆家事がしやすい環境

これらが揃っているだけで、「ここに1週間いても快適そう」というイメージにつながります。民泊がワーケーションに最適な理由は“自炊も洗濯もできる宿”だからこそです。

OTAでの見せ方も“仕事用途”を意識する

せっかくネット環境や作業スペースを整えても、それをOTA（Airbnb、Booking.comなど）上で伝えきれていなければ意味がありません。

検索結果に表示されたとき、ユーザーは以下のようなポイントをチェックしています。

• タイトルや紹介文に「ワーケーション対応」「リモートワークに最適」などのキーワード
• 写真でデスク＆椅子の配置が一目でわかる構図
• Wi-Fi速度の数値（実測値でもOK）を記載
• チェックイン・チェックアウトの柔軟性（長期向け滞在として安心材料になる）

「旅行」ではなく「滞在」をイメージできるような表現や写真の使い方が、ワーケーション層を惹きつける鍵となります。

長期滞在の魅力は「稼働率の安定化」と「手間の削減」

ワーケーション層の最大の魅力は、長期滞在による安定した売上です。1泊ごとの予約を追いかける必要がなくなり、チェックイン・チェックアウトの頻度が減ることで、清掃やメッセージ対応の手間も激減します。

また、長期ゲストは「住むように泊まる」ため、物件やホストに対して強い愛着が生まれやすく、リピーターになりやすいというメリットもあります。仮に1週間の滞在で1泊あたり1,000円ディスカウントしたとしても、結果的に稼働率・レビュー・オペレーション効率の全てが向上するという大きなリターンがあります。

まとめ

観光シーズンでなくとも、安定した予約を得たい──。そう考える民泊ホストにとって、「ワーケーション需要」は今まさに注目すべきチャンスです。観光客に見えて、実は「仕事」で来ているゲストに対応できるかどうかで、稼働率もレビューの質も大きく変わってきます。

• 安定した高速Wi-Fi
• 快適な作業スペース
• 長期滞在しやすい生活設備
• ワーケーション対応の明記と写真

こうした環境を整え、OTA上でしっかりと打ち出していくことで、高単価・高満足度の長期滞在ゲストを確保することができます。

「観光」だけに頼らない戦略を取り入れ、ワーケーション対応型の民泊へとアップデートしていきましょう。

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