民泊といえば短期滞在のイメージが強いかもしれませんが、実は30泊以上の長期予約を取り込むことで、収益の安定化やリピーターの確保といったさまざまなメリットを得られる可能性があります。ワーケーションや長期出張、留学・研修などで「1か月以上の宿泊先を探したい」というニーズは着実に増加中です。こうした需要をキャッチすれば、民泊新法（住宅宿泊事業法）の年間日数制限が気になるオーナーにとっても、物件を有効活用できる選択肢となるかもしれません。

一方で、長期予約を受け付けるには賃貸借契約とみなされるリスクや設備への負荷、トラブル時の対応が長引くおそれなど、いくつかの課題や懸念点も無視できません。本記事では、そんな30泊以上の長期予約を受け付けるメリットとリスクを整理し、うまく運営するためのポイントを解説していきます。

1. 30泊以上の長期予約を受け付けるメリット

1-1．安定した収益が見込める

短期予約では、繁忙期と閑散期の差が激しく、空室リスクや価格競争で収益が変動しやすいのが難点です。

しかし、30泊以上の長期予約を取り入れれば、その期間の宿泊費を固定的に得られるため、キャッシュフローが安定します。特に物件を複数運営している場合、長期予約を数件確保できれば家賃やローンの支払いに対する安心感が増すのではないでしょうか。

繁忙期の売り上げと閑散期の空室を平準化する効果も大きく、何よりゲストの入れ替えがないため、稼働率に左右されにくいというメリットがあります。高額な家賃やローンを抱える都心部の物件では、長期的に部屋を埋めてくれるゲストがいるだけでリスクを大幅に抑えられるのです。

1-2．清掃やチェックインの負担が軽減

短期予約が連続すると、ゲスト入れ替えのたびに清掃・リネン交換を行わなければならず、管理コストやスタッフの手間が膨大になります。一方、長期予約なら、その期間中は基本的にチェックイン・チェックアウトが1度ずつしか発生せず、清掃の回数も極端に減少。余計なコストやスケジュール管理の負担を抑えられます。

また、ゲストとのやりとりも最初のチェックイン時と必要に応じた連絡が中心となるため、1〜2泊のゲストが入れ替わり立ち替わりで問い合わせる状態に比べれば、かなり落ち着いて対応できるのが魅力です。大量のリネン洗濯や清掃チェックを頻繁にする必要もなくなる分、品質面に集中できるともいえます。

1-3．リピーターや口コミを狙いやすい

30泊以上の長期滞在をしてくれたゲストが満足すれば、その地域に来るたびに同じ場所を選んでくれるリピーターになる可能性が高まります。短期宿泊では「次は他の場所を試してみよう」となるケースが多いですが、長期滞在を心地よく感じてもらえれば、「ここなら落ち着いて過ごせる」と大きな信頼につながるのです。

さらに、滞在中にSNSやブログなどで長期間の生活の様子を発信してもらえれば、その口コミや写真が他の潜在ゲストに対する強いアピールになるでしょう。特に海外からのゲストなどは「数週間の滞在でこんな便利な部屋だった」と発信することで、国際的な宣伝効果を期待できるかもしれません。

1-4．周辺施設や地域との連携がしやすい

長期滞在ゲストは、地域のスーパーや飲食店などで生活を送ることが多くなります。

これにより、物件周辺の商店街や観光スポットとの相性が良ければ、地域との連携企画（地元レストランでの割引や体験ツアーなど）を提案しやすくなります。ゲストが長期間利用する分、周辺地域に落とすお金が増え、町おこしや地元活性化にも貢献できるのがメリットです。

2. 30泊以上の長期予約に潜むリスク

2-1．賃貸借契約とみなされる可能性

日本の法律では、30日を超える宿泊が賃貸借契約と見なされるリスクがあります。

そうなれば、借地借家法による保護が適用され、ゲスト（借主）の権利が強くなり、短期間では退去を求められないなどの制約が出る場合があります。普通の民泊感覚で運営していると、思わぬ法的トラブルに巻き込まれる可能性があるので、契約書の作成や法的確認を慎重に行うことが重要です。

2-2．物件に対する使用負荷が増える

ゲストが長期間滞在すると、キッチンや洗濯機、空調などを繰り返し使うことになり、物件や設備への負荷が大きくなります。

通常の短期宿泊よりも、家具や家電の消耗が早まる可能性があり、故障やメンテナンスの頻度が上がるかもしれません。長期ゲストが生活している間に洗濯機が壊れるなどのトラブルが起きた場合、緊急対応が必要になり、その対応コストがかさむリスクがあります。

2-3．トラブル時の対応が長期化

短期滞在の場合、ゲストが数日でチェックアウトするため、コミュニケーションのトラブルがあっても比較的短期間で収束します。しかし、長期滞在のゲストとの間でトラブルが発生すると、解決までに時間がかかり、運営全体に影響を与えるかもしれません。近隣住民との騒音トラブルやゲスト同士の揉め事が生じれば、解決に奔走することになるでしょう。

2-4．直前キャンセルによる損失

長期予約を受け付ける場合、もしゲストが直前キャンセルを行ったときのリスクは非常に大きいです。通常の数泊程度のキャンセルなら数日分の損失で済むかもしれませんが、30泊以上をまるごとキャンセルされた場合は、1か月以上の空室が出てしまう可能性があり、大きな経済的ダメージにつながります。

キャンセルポリシーをしっかり設定する、事前決済やデポジットを導入するなどの対策を講じておく必要がありますが、それでも100%リスクを回避できるわけではありません。

3. 30泊以上の長期予約を受け付けるデメリット

3-1．短期収益の機会損失

長期ゲストが1か月以上も部屋を占有していると、その間に観光ピーク時や週末の高単価短期予約を一切受けられない状態が続きます。通常なら繁忙期に短期予約を高めの料金で多数回転させて得る利益を逃してしまい、実質的な売り上げが落ちる可能性があります。

特にリゾートやイベント都市など、季節や行事で価格が大きく変動する物件では、繁忙期に高額で貸し出す短期を選んだほうが結果的に収入が増えるケースもあるでしょう。

3-2．物件のイメージが固まりにくい

民泊は写真やSNSでの拡散力が高く、短期ゲストが頻繁にレビューやSNS投稿をしてくれることで物件が注目を集める面があります。

しかし、長期ゲスト中心だと、一度入居したゲストが長期間滞在するため、レビュー数やSNS投稿が少なくなる可能性があります。新鮮な話題や口コミの更新が少なく、検索アルゴリズム上でも順位が上がりにくい場合があるかもしれません。

3-3．運営スタイルの柔軟性が下がる

長期予約のゲストが滞在中は、物件の大幅なリノベーションやアップグレードを行いにくくなります。たとえば新しい設備を入れようと思っても、ゲストがいる状態で工事ができないなど、柔軟な運営が難しくなるデメリットがあります。新しい戦略や料金設定の変更を試しにくい点も見逃せません。

4. 成功のためのヒント：長期予約と短期予約のバランス

4-1．物件ごとに異なる最適解

30泊以上の長期予約は、全ての民泊物件にとって最適な戦略とは限りません。都市型のビジネス利用が見込める物件なら長期予約がハマるかもしれませんし、リゾート型で観光のピークシーズンが明確な場所なら短期高回転が有利な場合もあります。自分の物件の立地や想定ゲスト層をよく検討し、柔軟に使い分けることが鍵です。

4-2．リスク管理と契約内容の明確化

30日を超える滞在では、賃貸借契約のリスクや直前キャンセルリスクなどが増大します。

これを避けるために、ゲストとの契約書には「これはあくまで宿泊施設として提供されるもの」という文言を盛り込み、キャンセルポリシーやデポジット設定をはっきりさせましょう。何よりゲストとのトラブルが発生した場合、両者が納得できる解決策を用意するため、事前にルールを定めておくのが重要です。

4-3．マルチな運営戦略

必ずしも「すべて長期予約オンリー」にする必要はありません。物件や時期によっては、繁忙期は短期予約をメインにし、閑散期は長期予約を受け付けるなど、ダイナミックな価格・予約管理を行う方法もあります。一定期間だけ長期予約を募集して、それが取れなければ短期に切り替える、といった柔軟な運営が収益最大化に繋がります。

5. まとめ：リスクを把握しつつ長期予約を上手に取り込む

民泊で30泊以上の長期予約を受け付けることは、安定収益や管理コストの削減といった大きなメリットをもたらす一方、賃貸借リスク、設備負担増、短期高単価ゲストの逸失などのデメリットも伴います。結論として、以下のポイントを総合的に考慮して判断すると良いでしょう。

1. 物件の立地や客層を分析し、長期滞在ニーズが確実にあるか判断する
2. リスク管理を行う：契約書やキャンセルポリシーを整備し、万が一のトラブルに備える
3. オフシーズンと繁忙期を見極め、状況に応じて長期予約と短期予約を使い分ける
4. ゲスト満足度の向上: 長期滞在中のケアや設備メンテナンスを怠らず、「またここに泊まりたい」と思わせる仕組みを作る

こうした方策をしっかりと整えられれば、30泊以上の長期予約は民泊運営において強力な収益源となり、物件の価値を高める大きなチャンスとなります。

民泊の長期予約対応もStay Buddy株式会社にご相談ください

民泊運営における30泊以上の長期予約の導入や、長期滞在ゲスト向けの契約書・プラン作成、清掃・メンテナンス体制の見直しなどでお悩みの方は、ぜひStay Buddy株式会社にお問い合わせください。

多くの民泊物件を成功に導いてきた知見とネットワークを活かし、長期予約を取り入れるうえでのリスク管理や最適な価格設定、ゲスト対応のノウハウをトータルにサポートいたします。長期滞在を上手に取り込み、安定した収益とリピーター獲得を目指すなら、ぜひStay Buddy株式会社にご相談ください。