民泊の運営において「価格設定」は、最も頭を悩ませるテーマのひとつです。価格が高すぎれば予約が入らず、低すぎれば利益が出ないばかりか、施設のイメージが損なわれるリスクもあります。そうした中で意識したいのが、「近隣競合物件よりもちょっと高く設定する」という考え方です。

一見、逆効果のように思えるかもしれませんが、あえて“ほんの少し高め”に価格を設定することで、施設のブランド価値を維持しながら、予約も安定的に確保できるというメリットがあります。本記事では、民泊運営者が実践したい価格調整の考え方と、「ちょっと高く」戦略の具体的な活用方法を解説します。

価格設定は「単に安ければいい」わけではない

民泊プラットフォーム上では、価格比較がワンクリックで可能な時代です。そのため「競合より安くすれば予約が取れる」と考えがちですが、実際は価格だけで選ばれるわけではありません。ゲストは価格に加えて、写真、立地、レビュー、清潔さ、対応の丁寧さなど、さまざまな要素を総合的に判断しています。

価格を下げることで一時的な予約増加を見込めても、その分収益性は低下しますし、価格に見合ったサービスレベルまで落としてしまえば、低評価レビューの温床になりかねません。そうなると、「安くて微妙な宿」という印象が定着し、結果的に損をする可能性が高いのです。

なぜ「ちょっと高く」がベストなのか

近隣の競合物件と比較して、価格をほんの少し高く設定することには、いくつかの重要な理由があります。

ブランド価値を維持できる

民泊においても「価格＝ブランド」の側面があります。安すぎる価格帯の物件は、どうしても「安っぽい」「質より量」という印象を持たれがちです。逆に、近隣物件より少し高い価格に設定しておくことで、ゲストは“理由があるから高い”と認識しやすくなります。

たとえば、写真が美しく、清潔感があり、レビューも高評価であれば「ここは安心して泊まれる」「質が高そう」という期待を持たれ、価格差を超えて選ばれることが少なくありません。

価格でフィルタリングされにくくなる

OTAでは、ゲストが「価格帯」で宿泊施設をフィルターにかけることがよくあります。競合と同じ、またはそれ以下の価格帯に入ることで、類似物件と同じ土俵に並べられ、単なる価格競争に巻き込まれてしまうのです。

しかし、あえて価格帯を一段上げておくと、比較される物件の質も上がり、「この中ではここが一番コスパが良さそう」と思わせることができるようになります。これは、“プレミアム感”を演出する上でも有効な戦略です。

問い合わせ・予約の質が上がる

価格が低すぎると、ゲスト層も“価格だけを重視する層”に偏りがちです。そうなると、細かい値下げ交渉をしてきたり、滞在中のクレームや無理な要求が多くなったりする傾向があります。

その点、少し高めの価格設定にしておけば、一定のリテラシーと余裕のあるゲストが集まりやすくなり、トラブルも減少します。丁寧に宿泊施設を利用してくれるゲストが増えれば、高評価レビューも得られやすくなり、長期的なブランディングにも好影響を与えます。

「ちょっと高く」を実現する価格設定の考え方

価格を上げるといっても、極端に高くする必要はありません。重要なのは、競合との「小さな差」を意識することです。

たとえば、周辺の物件が1泊あたり12,000円前後である場合、自分の物件は12,800円〜13,000円程度に設定するといった具合です。この「800円〜1,000円程度の差」が、ブランド感と収益性を両立させる絶妙なバランスになります。

また、次のような価格戦略もあわせて検討すると良いでしょう。

• 平日と週末で料金を分ける（ダイナミックプライシングの導入）
• 閑散期は競合に合わせ、繁忙期は価格をしっかり上乗せする
• 長期滞在の割引設定を行い、稼働率を底上げする
• 「1名利用時」「2名以上利用時」などで価格帯に変化をつける

こうした細やかな調整によって、単なる「高い宿」ではなく、「ちゃんと価格に理由がある宿」として選ばれやすくなります。

価格以上の価値を伝える見せ方も大切

「ちょっと高め」の価格戦略がうまくいくかどうかは、ゲストがその金額に納得感を持つかどうかにかかっています。そのためには、価格以上の価値をきちんと見せることが非常に重要です。

• 写真：部屋の雰囲気がしっかり伝わるよう、明るく広く撮影された画像を掲載する
• 説明文：設備、立地、こだわり、周辺環境など、詳細で魅力的な紹介文を用意する
• レビュー：ゲストからの評価を定期的にチェックし、返信も丁寧に行う
• ハウスマニュアル：チェックイン方法や周辺案内をわかりやすく整備しておく

また、OTA上だけでなく、SNSや自社サイトでも施設の世界観を発信していくことで、価格以上の印象を植え付けることができます。結果的に、他の施設より少し高くても「ここに泊まりたい」と思わせる力がついてきます。

よくある疑問：「高くしたら予約が減るのでは？」

確かに、「安さ」を軸に物件を探しているゲストからの予約は減る可能性があります。しかし、それはむしろ好ましいこととも言えます。なぜなら、価格に納得して泊まってくれる人の方が満足度が高く、ホストとのトラブルも少なくなるからです。

それに、「高くても価値がある」と感じたゲストからの評価は、他の見込みゲストの購買意欲を引き上げてくれます。つまり、価格が高めでも、良質なレビューが集まることで、予約数は維持または上昇する可能性があるのです。

安さに引かれてやってくるゲストより、ブランドに惹かれて選んでくれるゲストの方が、長期的に見て圧倒的に価値が高いのです。

まとめ

民泊の価格設定は、ただ「競合より安くすればいい」という時代から、「競合よりも価値を感じてもらう」時代へとシフトしています。その中で、「近隣競合物件よりもちょっと高く」を意識した価格戦略は、ブランドの確立、収益の安定、トラブルの抑止といった複数の効果をもたらしてくれる手法です。

もちろん、価格だけを上げて中身が伴っていなければ、すぐにレビューで評価が下がります。だからこそ、「ちょっと高い価格」にふさわしい写真や説明文、設備、ホスピタリティを整える努力も必要になります。競合が安値合戦を繰り広げている今だからこそ、「質で選ばれる民泊」を目指し、小さな価格差で大きなブランド価値を築いていきましょう。

民泊の価格調整はStay Buddyまでご相談ください

価格戦略に迷っている民泊ホストの方や、「安すぎると利益が残らないけど、高くすると不安…」という方は、ぜひStay Buddy株式会社にご相談ください。物件の立地や設備、レビュー傾向などに応じた最適な価格帯のご提案から、ブランディング支援、OTA活用のアドバイスまで、収益性とブランド力を両立する運営ノウハウをご提供いたします。最初の一歩を正しく踏み出すために、ぜひお気軽にお問い合わせください。