民泊をやっていると、予約が思うように伸びないときや、近隣エリアで新たな競合物件が出現してきたときなどに、「値下げ」が頭をよぎるタイミングがあります。確かに宿泊料金を下げれば、予約を埋めるという目的そのものは達成しやすいでしょう。需要と供給のバランスを考えれば、安価な宿には一定のゲストが集まるのは間違いありません。

しかしながら、ただ料金を下げる行為は、短期的に見れば予約率改善につながるものの、長期的には宿のブランド価値を損ない、収益やゲスト層の質を下げるリスクがあるという点は軽視できません。安い宿と認識されることで「ここは安いから」程度の選択理由になり、結果的にトラブルや低評価に直結するケースも起こりがちです。

そこで本記事では、「民泊運営において安易な値下げは禁物」という主張を中心に、値下げによるデメリットや、正しい価格設定を行うためのポイントを考察していきます。

1. なぜ安易な値下げが問題になるのか

1-1．ブランド価値の低下とイメージ悪化

物件を値下げすることで予約が入ると、一見「稼働率が上がって良かった」と思えるかもしれません。ですが、ホテルや民泊は**「価格と品質の関連性」がゲストの心理に強く影響する業種です。

「あの宿、意外と安く泊まれるんだ」と思われると、それ相応のレベルしか期待されず、同じ物件でも「それなりだよね」とイメージダウンにつながりがちです。さらに、レビュー投稿でもゲストが「安いから文句は言わないけど、やっぱりクオリティもそれなり」という印象を広めることがあり、後続のゲストも同様に低品質を覚悟のうえで安さ目的**で来るようになる可能性があります。

1-2．客層の質が下がる恐れ

安い宿泊費を求めるゲストは、どうしてもコスト面だけに重きを置きがちな場合があります。そうした層は「安いから多少の不備は仕方ない」と思ってくれる優しい人もいますが、一方で「値段の割にもっとサービスが良いはず」と無理難題を要求するゲストも存在するのが実状です。

トラブルの起きやすいゲストが増え、清掃や設備を雑に扱われたり、騒音やゴミ出しルールを守らないなど面倒な事態に直面するリスクが高まることも懸念されます。結果的にオーナーや管理者のストレスが増え、レビューや評価まで悪化するという悪循環に陥りかねません。

2. 値下げに頼ることで起こり得る悪影響

2-1．本来の収益モデルを圧迫

民泊を運営するうえで、最低限の収益ラインはクリアしないと維持コストすらままなりません。例えば、清掃やリネン費、光熱費、備品の補充などが必要になりますし、複数の物件を運営している場合、人件費や各種業務委託費もかかります。単価を安くしすぎると、稼働率が上がっても利益はほとんど残らないといった状況に陥るわけです。

また、利益率が低いと、物件改修や設備投資に回す余裕がなくなり、クオリティを保つのが難しくなります。低価格帯のままでは、新しい競合が出てきたときにさらに値下げを迫られる負の連鎖に陥るリスクも高いです。

2-2．災害やコロナのような不測の事態に耐えられない

民泊業界は、コロナ禍や自然災害、世界的な経済変動などの影響を大きく受けます。もし価格を下げてギリギリの状態で運営していると、一時的に需要が減少しただけでも経営が回らなくなる恐れがあります。リスクを吸収するためのクッションがないので、数週間の空室が続いただけで赤字という状況になるケースも珍しくありません。

適正価格で一定の利益を確保していれば、予想外のトラブルが起きてもある程度対応でき、設備の修繕や追加サービス提供などで踏みとどまれるでしょう。

3. 適正価格で勝負するメリット

3-1．ブランドイメージと期待感

「〇〇円くらいの宿」に泊まるとき、ゲストはそれなりのクオリティを期待します。過度に安い設定だと「安いから仕方ないよね」という期待値ダウンが起こり、良い印象を得にくいかもしれません。逆に適正な価格である程度の高級感があれば、「この価格帯だし、きっとサービスや設備もいいはず」と、期待値をポジティブにコントロールできます。

また、料金がある程度高めの物件ほど「プレミアムな体験」を打ち出せる可能性が高く、差別化もしやすいでしょう。ブランディング視点では、値下げ競争に巻き込まれず、自分の物件ならではの価値を明確にする方向が望ましいです。

3-2．より良いゲスト対応と継続投資が可能

適正価格を維持して十分な利益が確保できれば、オーナーは清掃やメンテナンス、リネンの品質やゲストサポートへの投資を惜しまずに済みます。その結果、部屋の清潔感や設備のクオリティが安定し、ゲスト満足度が高まってレビュー評価が上がり、結果的にまたリピーターや高単価客が増えるという良い循環に繋がるのです。

安売りをしてギリギリの利益だと、清掃スタッフの人数を削ったり、リネンの交換頻度を減らしたりといった負担軽減策を取らざるを得なくなるリスクがあり、結局評価を下げてしまうかもしれません。

4. どうすれば「適正価格」を保ちつつ集客できるのか

4-1．物件の魅力を再整理し、発信を強化

まずは自分の民泊物件が持つ独自の特徴を明確にしましょう。海辺の絶景が見える、和モダンな内装が人気、キッチン設備が充実している、ファミリー向けに子ども用グッズが豊富、など売りになるポイントは様々です。

それらを写真や紹介文でアピールし、「ただ安いだけ」の物件でないことを強調するのが重要です。SNSや予約サイトのプロフィール欄で詳しく説明し、ゲストが「ここは価値がある」と感じるように情報設計すると、価格が少し高くても納得してもらいやすくなります。

4-2．差別化を図る追加サービス

ゲストに付加価値を提供することで、割安感やコスパをアピールする方向も考えられます。例えば、朝食セットや地元食材の提供、プライベートツアーのオプション、記念日のデコレーションなど、価格以上の体験を用意するのです。

こうした取り組みによって口コミ評価が上がれば、自然と予約単価もキープしやすくなるでしょう。ゲストの「お得感」は単に宿泊費が安いかどうかではなく、「その料金で得られる体験やサービスが価値に見合うかどうか」で決まる面が大きいです。

5. 値下げがどうしても必要な場合の対処法

5-1．限定的キャンペーンやタイムセール

安易な恒常的値下げをするのではなく、期間限定での割引や直前割など、キャンペーンとして打ち出すのがおすすめです。そうすることで「本来はもっと高いけれど、今だけお得」という印象をゲストに与え、「安かろう悪かろう」とは別の形で予約数増加を狙えます。

ただし、割引に頼りきるとユーザーが**「またすぐ値下げキャンペーンやるでしょ」**と学習して、通常料金で予約しなくなる恐れもあるため、時期と回数を制限して行うと良いでしょう。

5-2．価格据え置きで「内容を縮小」

どうしても稼働率が低いときに経費負担が大きいなら、ある程度の内容削減でコストダウンを図る手段もあります。清掃回数を少し調整したり、高級リネンから標準リネンに切り替えるなどが該当しますが、やりすぎるとゲスト満足度を下げるリスクがあり、慎重な判断が必要です。

価格を変えずにサービスレベルを見直すのは難易度が高いですが、どうしても黒字化が難しい場合の緊急対応としては有効かもしれません。ただし長期的には価格とサービスのバランスを再検討するほうが賢明です。

6. まとめ：民泊運営は安易な値下げ禁止。価値を創出し、適正価格を維持しよう

「値下げすれば予約は埋まる」――これは一時的には確かに真実です。しかし、そうした短絡的な価格競争に踏み込んでしまうと、長期的にはブランドイメージの低下、ゲスト層の質の低下、利益確保の困難など多くの負の連鎖が待っています。大きなトラブルや災害に見舞われた際にも柔軟に対応できるよう、一定の利益と余力を確保することが、民泊経営においては欠かせないのです。

大事なのは、ゲストが「この物件ならこの価格でも納得できる！」と思えるようなコンセプトやサービスを作り込むことです。設備や内装を工夫したり、ホストとしてのコミュニケーションを高めたり、地域性を活かしたオプションを提供したりすることで、高品質・高評価を維持できれば、競合物件が値下げ合戦に走っても安定した稼働率を得やすくなるでしょう。

もちろん、市場の需給やシーズナリティを反映した適切な価格調整は必要ですが、“安易に一律値下げする”のではなく、ターゲットや付加価値をしっかり考慮したうえでの運営が重要です。最終的には、ゲストの満足度と収益のバランスを取りながら、持続可能なビジネスモデルを築くことこそ、民泊運営の成功につながります。

民泊の価格調整に関してはStay Buddyにお任せください

民泊での価格戦略やブランドづくり、設備の導入など、より詳しいアドバイスを必要としているオーナーや運営代行事業者の方は、ぜひStay Buddy株式会社にお問い合わせください。

多くの民泊物件を成功へ導いた実績をもとに、周辺相場やターゲット設定、予約サイト上の見せ方、レビュー対策など多岐にわたる分野でサポートを行っています。安易な値下げではなく、適正価格でしっかりゲストを呼び込みながら利益を確保したいとお考えの方は、ぜひStay Buddy株式会社へご相談ください。物件ならではの価値を最大限に活かし、長期的な安定経営を実現するお手伝いをいたします。